薪ストーブとロケットストーブの構造や設計思想の3つの違い

最近、ロケットストーブを自作する人が少しずつ増えてきましたね。

我が家のリビングでも自作ロケットストーブが大活躍してくれています。

ただ、一般的な薪ストーブとロケットストーブでは設計思想が異なるため、それらの構造が違うのはもちろんのこと、それらを構成するそれぞれのパーツの役割にも違いがあります。

安定した燃焼と高い暖房効果、スムーズな排気を可能にするロケットストーブを自作するためには、その点を十分に理解しておく必要があると思います。

そこで今回は、そのような一般的な薪ストーブとロケットストーブの構造や設計思想の違いについて、3つのカテゴリに分けて詳しくお話していきます。

燃焼に対する考え方の違い

まずはじめにお話したいことは、一般的な薪ストーブとロケットストーブの燃焼に対する考え方の違いについてです。

薪ストーブの歴史

現在主流になっている鋳物の薪ストーブは、別名フランクリンストーブと呼ばれています。

Franklin_stoveの構造

出典)Franklin stove|Wikipedia

そのフランクリンストーブは、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790)が古いヨーロッパの家庭でよく見られた燃焼効率の悪い開放型の暖炉に、5枚の鉄製板を使った覆いや独自の排煙構造を設けるなどの工夫を加えたことにより、暖房効率を大幅に引き上げる事に成功しました。

現在の薪ストーブはこのフランクリンストーブを、小型で後付が可能な形に改良されてきたものにあたります。

その燃焼のイメージは、その開放型の暖炉という由来から分かるように、焚き火を家の中に持ってきたような感じです。

ある程度の大きさの燃焼室の中に薪をいれ、そこに熱源(火)と空気(酸素)を入れて着火することによって、薪や薪から発生する燃焼ガスが燃えだします。

薪ストーブは燃焼室が大きいため、一度に沢山の薪を入れることができ、比較的長い時間燃焼を維持する事が出来る、つまり低温での長時間の燃焼が可能な点が薪ストーブの燃焼の特徴です。

また、近年では、薪ストーブの中で薪が低温燃焼したときに発生する未燃焼ガス(火をつければ燃えるもの)を、二次燃焼機構や触媒などを使って燃やし、更なる燃焼効率の向上や煙突火災の発生の低減を実現している製品も開発されています。

出典)薪とペレット&ストーブのノウハウ|薪・木質ペレットの森

ロケットストーブの燃焼について

ロケットストーブとは、持続可能な生活の研究、教育を目的としたNGO AProvechoのテクニカルディレクター、ラリー・ウィニアルスキー博士によって1982年頃に開発された、効率の良いストーブの燃焼原理です。

ロケットストーブのイメージ

出典)Rocket stove|Wikipedia

ウィニアルスキー博士がロケットストーブを開発した目的は、発展途上諸国や難民キャンプにおいて木質燃料を使用することから起こる環境問題(森林伐採、排気による気候変動への影響など)、料理や暖房のために室内でかまどや焚き火などを使用し、その結果不完全な燃焼の排気を吸う事による健康の悪化などの解決を目指すことから始まりました。

つまり、ロケットストーブの基本思想は、薪の使用量の削減とクリーンな排気を実現するものを、できるだけ簡単な構造で安く作れるようにしようということになります。

そのロケットストーブの燃焼方法は、開放された鉄製のL字パイプの水平部に薪をいれ、それに着火すると、薪から発生した燃焼ガスが断熱された垂直のパイプ(ヒートライザー)内で燃焼しながら急激に膨張し、そのパイプの中を勢い良く上昇していきます。

Rocket_stoveの燃焼方式

出典)Rocket stove|Wikipedia

このように、比較的簡単な構造で未燃焼ガスを燃やしきることが出来るため、燃焼効率が良く、排気もクリーンなのがロケットストーブの特徴です。

燃焼室を設計する上で重要なポイント

少し前の話に戻りますが、一般的な鋳物の薪ストーブは燃焼室が大きいことが特徴で、その結果、薪ストーブは低温で長時間の燃焼が可能だともお話しました。

それに対してロケットストーブの燃焼室を設計する上で重要なポイントは、燃焼室の大きさ(パイプの内径)を大きくしすぎてはならないということが挙げられます。

ロケットストーブは木材の投入口付近の狭い小さな空間で木材を燃焼させ、そこで得られる高温の熱で木材とパイプの隙間を通ってきた空気を暖め、木材から発生した未燃焼ガスをヒートライザー(垂直の煙突)内で燃焼させることによって、燃焼効率の向上とクリーンな排気を実現しています。

ロケットストーブの二次燃焼のイメージ

出典)月刊 現代農業2013年12月号

例えば、体育館でマッチ一本の火をつけても体育館の温度はほとんど変わらないと思いますが、場所を変えて空き缶の中でマッチに火をつけると、空き缶の中の温度は結構上昇すると思います。

このように、同じ熱量の熱源を使っていても、燃焼室を狭く小さくしてやれば、その場所の温度をあげることができます。

ロケットストーブの場合、燃焼室の断面積を排気管(煙突)と同程度にすることによって、少ない燃料でも燃焼温度を高くすることができます。

ですから、薪ストーブのように燃焼時間を長くしたいからといって、単純にロケットストーブの燃焼室を大きくして、沢山の薪を入れられるようにしてしまうと、ヒートライザーに流入する空気の温度が低下し、未燃焼ガスがヒートライザー部で二次燃焼されず、そのまま排気される(燃焼効率が下がる)ことになってしまいます。

つまり、ロケットストーブの燃焼は、短時間で高温燃焼させるのがポイントであり、逆に考えると、薪ストーブより薪を投入する間隔が短くなってしまうことがデメリットになります。

熱の伝熱形態に対する考え方の違い

3つ目は、薪ストーブとロケットストーブの熱の伝え方の違いについてお話していきます。

薪ストーブの熱の伝熱形態

薪ストーブは、主に薪ストーブ本体や煙突から発せられる輻射熱によって、直接体を温める伝熱形態をとります。

薪ストーブから発せられる輻射熱で体を温める

出典)暖房システム|薪ストーブならダッチウエストジャパン

だから、薪ストーブを設置した部屋は温度が低くても、薪ストーブの近くにいると太陽に照らされたような、ぽかぽかした暖かさを感じることが出来ます。

もちろん、ストーブ本体や煙突は高温になっているため、それらが空気を暖める役割も果たしていますが、その割合が小さいのが薪ストーブの特徴です。

輻射熱によって暖房するメリットは、その抜群のなんともいえない気持ちよい暖かさと、空気や家全体を暖めなくても体が温かくなるため、その点において燃料を消費しなくて済むという点です。

デメリットは、薪ストーブが置かれている部屋にいる時は輻射熱で暖かさを感じることが出来ますが、壁をはさんだ反対側の部屋には輻射熱が到達しないため、全館暖房には向いていないという点。

このことから、相当な広さのある部屋の暖房や、大きな一つの部屋だけで構成されている仕切り壁の少ない家などの暖房に適している器具であるといえます。

薪ストーブの輻射熱のいい所

出典)輻射式の暖房|一級建築士事務所 丹羽明人アトリエ

ロケットストーブの熱の伝熱形態

ロケットストーブの伝熱形態は、比較的幅が広く、本体や煙突から発せられる輻射熱とともに、燃焼後の空気がが低温になるまで室内に熱を伝えきることも出来ます。

その理由は、先ほどの排気のところで説明したとおり、ロケットストーブ本体のヒートライザー部ですでに強力な排気力を生み出しているため、そこから先の煙突を相当長く、また曲がりくねった形にしても良いという点にあります。

ベンチタイプのロケットストーブ

出典)rocket mass heater

このように、ロケットストーブの延長した煙突をベンチシートの中に配置した場合、屋外に排出される煙の温度は30℃程度になっていることもあり、100~200℃という高温のままで屋外に排気をしなければならない薪ストーブより、少ない薪でも沢山の熱を取り出すことが出来るため、暖房で使用する薪の消費量が少ないというのがロケットストーブの特徴です。

また、私が作ったロケットストーブのように、ロケットストーブの上部に取り付けた煙突にファンで風を当てることにより、ファンヒーターのように空気を暖めることもできます。

輻射熱だけではなくファンヒーター機能もプラス

この方式なら壁の多い日本の2×4工法で建てられた量産型の家にも、後付のセントラルヒーティングのベースを賄う暖房器具として、ロケットストーブを活用する事も可能になります。

排煙に対する考え方の違い

一般的な薪ストーブとロケットストーブでは、排煙に対する考え方が大きく異なります。

ロケットストーブの自作を考えている人は、排煙のメカニズムや煙突の構造の違いについてしっかりと理解しておきましょう。

一般的な薪ストーブの排煙について

一般的な薪ストーブの排煙方法は至ってシンプルです。

薪ストーブの上方に伸びる煙突に、熱せられた密度の小さな高温空気が入り込むことによって、煙突内部に上昇気流(ドラフト、浮力)が生まれるため、薪ストーブ本体から煙突に流れ込んだ燃焼後の煙はそのまま屋外に排出されます。

出典)暖炉・薪ストーブと煙突|STOVE SUPPORT

また、それによって薪ストーブ本体には自然と室内の空気が流れ込むため、燃焼に必要な空気が薪ストーブの中に送り込まれるようなイメージです。

薪ストーブにおいて、安価なシングル煙突ではなく、高価な断熱二重煙突が勧められている理由は、煙突内を流れる燃焼後の空気の温度を高温に保ち、強いドラフトを維持する役割もあります。

ロケットストーブの排煙について

ロケットストーブも、煙突内のドラフトの原理は薪ストーブと同じです。

ただし、煙突内に流れ込む空気違いがあり、燃焼室の直後に設けられたしっかりと断熱された垂直な断熱煙突(ヒートライザー)に燃焼後のガスが流入し、さらにヒートライザー内部でも未燃焼ガスの二次燃焼が行われるため、そのヒートライザー内部が非常に高温になり、強力なドラフト(煙突内部を流れるガスの浮力)が生まれます。

ロケットストーブの二次燃焼のイメージ

出典)月刊 現代農業2013年12月号

ロケットストーブの本体に含まれるヒートライザー部だけで、燃焼後のガスを排気するだけのドラフトを生み出すことが出来るため、それ以降に接続する煙突をドラフトを得るための高価な断熱二重煙突にする必要はありません。

また、そのヒートライザーで生み出されるドラフトは強力なために、薪ストーブではタブーとされている煙突のL曲がりを多用することも可能ですし、場合によっては、この煙突を延長してその排熱を利用するようなベンチタイプのロケットストーブ(ベンチの内部に煙突が設置されている)を作ることも可能です。

ベンチタイプのロケットストーブ

出典)rocket mass heater

鋳物の薪ストーブの場合、屋根の上の煙突出口の排気温度が150~200℃の高温にしておかないとうまく煙を排出することができませんが、ロケットストーブの場合、煙突の出口温度は70~80℃とかでもOK(煙突内結露を考慮する必要はある)なので、薪から取り出した熱をより多く家の中に取り込むことができます。

最後に一言

今回は、薪ストーブとロケットストーブの構造や設計思想の3つの違いについてお話しました。

薪ストーブやロケットストーブを自作する場合、今回紹介した考え方を踏まえて自作するようにすると、比較的スムーズな燃焼や効率の良い伝熱形態を得ることが出来ます。

また、こちらの記事も参考にすると、より精度の高いロケットストーブを作ることができるようになるでしょう。

>>【完全保存版】自作ロケットストーブの原理と構造を徹底解説

ただし、それらを実際に作る場合は、必ず自分自身で実験や検証を行いながら、空想や妄想、仮説のまま製作設置してしまうのではなく、実際に目の前で想定した現象の事実確認を行い、自己責任の元、暖房器具として室内に設置するようにしてください。

薪ストーブを自作する場合、すべて自己責任になりますので、その点をしっかりと頭の中に入れて行ってくださいね。

それでは!

2019年6月20日原理構造

Posted by ロケットストーブマニア