薪ストーブの煙突火災を防ぐための5つのポイント

煙突火災のメカニズム

湿った薪などを150℃程度を超えない温度で燃焼(低温燃焼)させてしまうと、本来薪ストーブの中で燃えるべき燃焼ガスが燃えずに煙突内部に流れ込んでしまいます。

更に煙突の表面が冷たいシングル煙突や性能の悪い断熱2重煙突などを使っていると、その燃焼ガスが煙突内部の壁に冷やされ、ガスから液体の状態に変化し、そこにタールとして蓄積されます。

煙突内部に未燃焼ガスが濃縮したものが溜まった状態で薪ストーブで薪を勢いよく燃やしてしまうと、何らかの拍子で炎が燃焼室から煙突の方に移動してしまい、燃焼室ではなく煙突内部で燃焼が始まり、その結果、煙突が1200℃を超える高温になってしまいます。

このように薪ストーブの燃焼室ではなく、煙突内部で燃焼が起きている状態のことを煙突火災といいます。

ほとんどの場合は、煙突火災が起こったとしても、煙突内部の可燃性物質が燃え尽きれば、火種がなくなり、自然に煙突火災は解消されます。

ですが、最悪の場合、煙突火災によって、煙突が高温に耐えられず破損したり、煙突が破損していなくても煙突の近くにあるものが放射熱によって過熱され発火する事によって、火が煙突内部から外に漏れ出し、火事になることもあります。

煙突火災と薪ストーブの現状について詳しく書かれた記事がありましたので、そちらの記事も紹介しておきます。

是非、参考にしておいてください。

>>本当に怖い煙突火災の話し|誰も言わなかった薪ストーブの話2

>>昨年暮薪ストーブによる住宅火災が2件発生|森と家作りのブログ

煙突火災を防ぐための5つのポイント

そんな恐ろしい煙突火災による火事を防ぐためには、以下の5つのポイントを守ることが重要です。

湿った薪を使って低温燃焼させない

未燃焼の可燃性ガスを発生させる低温燃焼を生み出す主な原因は、水分を含んだ薪を無理やり巻きストーブに突っ込んで、その中で乾燥させながら燃焼させようとするから。

湿った薪の中に含まれている水分が蒸発するためには、沢山の熱を必要とし、水分が蒸発するために燃焼室内部の熱を大量に吸収していきます。

湿った薪を入れても燃焼室の温度がなかなか上がらず、うまく燃焼していかないのはそのようなメカニズムがあるためであり、湿った薪を使うことが煙突火災の原因となる低温燃焼を誘発しています。

薪ストーブに使う薪はしっかりと乾燥させたものを使うことを前提として作られていますので、湿った薪を使うのはやめておきましょう。

断熱性能の高い煙突を設置する

煙突火災を防ぐためには、燃焼室から上がってくる未燃焼ガスを煙突内部で凝縮させずに、大気中に放出させる必要があります。

どうしてかというと、未燃焼ガスが煙突内部に蓄積されなければ、そこに燃えるものがないため、煙突火災が発生しなくなるからです。

未燃焼ガスが煙突内部で凝縮しないためには、煙突内部の表面温度を高く保つ必要があり、それを実現するためには断熱性能の高い煙突を採用する必要があります。

だいたい100万円かかる薪ストーブの設置費用の内訳のうち、煙突にかかる値段が高いのは、このような断熱性能の高い煙突を採用する必要があるためなのです。

また、断熱性能の高い煙突は火災に対する耐久性も高いため、仮に煙突火災が起きたとしても煙突が破損する確率が大幅に下がります。

そういった意味でも、鋳物の薪ストーブを設置する場合には、断熱性能の高い2重煙突を採用してください。

二次燃焼機構のある薪ストーブを購入する

最近では、薪ストーブの中部に発生してしまった未燃焼ガスを再び燃焼させるための二次燃焼機構を備えているものがあります。

そこそこの値段する薪ストーブにはこの二次燃焼機構が備えられていますが、一部の安価な薪ストーブにはそれがついてないものもあります。

いかなる状況でも完全に未燃焼ガスを再燃焼させることが出来るという代物ではありませんが、安全のために二次燃焼機構の備えられている薪ストーブを購入する事をオススメします。

煙突と壁の距離を離し、壁を貫通する部位にはめがね石を設置する

煙突火災が起きてしまった場合、煙突と壁との距離がどのくらいはなれているかによって、その煙突火災が家屋の火災に繋がるかどうかが決まります。

煙突火災が起きた場合、煙突からは熱が大量に放射されます。

その放射熱が煙突の近くにある壁などに伝わり、着火温度を超えてしまった場合、壁から火が出て家屋の火災が始ります。

煙突火災によって煙突が破損しなくても家屋の火災になってしまうのは、このような理由があるから。

逆に考えると、その熱放射によって伝わる熱量は、煙突と壁との距離に反比例するため、煙突が壁から離れていればいるほど伝わる熱量は小さくなります。

煙突と壁の距離を15cm以上離して設置する事と明記されているのはそのためです。

ただ、この15cmというのはあくまで法律で定められている目安であって、それ以上の距離(30~40cm)を壁と煙突の間に確保しておいたほうが良いと思います。

煙突掃除をしっかりと行う

煙突火災は、煙突内部に可燃物(煤やタールなど)があるから発生してしまいます。

ですから、定期的に煙突掃除をしてそれらを取り除いてしまえば、煙突火災を防ぐことが出来ます。

煙突掃除は地味な作業で嫌煙してしまいがちですが、煙突火災だけではなく、良好な燃焼を促すドラフトを得るためにも必要ですので、定期的にやっておきましょう。

ロケットストーブが煙突火災になりにくい理由

ここまでは煙突火災について詳しくお話してきました。

ただ、このサイトで紹介しているロケットストーブは、この煙突火災とはほとんど無縁の存在です。

なぜか?

ロケットストーブは燃焼室が小さく、給排気も強力に行われるため、燃焼室に入った薪は内部で完全に高温燃焼してしまい、そもそも未燃焼ガスが発生しにくいから。

未燃焼ガスが発生しにくいのだから、煙突内部に可燃ガスが濃縮する事もありませんし、燃えるものがなければ煙突火災にもなりません。

この事実は、ロケットストーブを実際に使ってみたことがある人ならよく分かると思います。

ロケットストーブは、一度火をつけたら薪が燃え尽きるまで勢いよく薪を燃やしていきます。

逆に、何らかの理由で炎が消えてしまったら、一気に燃焼室の温度が下がってしまい、薪を蒸し焼きにするなんて事はロケットストーブの場合は、逆にやろうとしても出来ません。

「ガンガン燃えている」か、「全く燃えていない」がはっきりしているロケットストーブだからこそ、熱容量の大きな薪ストーブのような薪を蒸し焼きにして、未燃焼ガスを発生させるという状況が生まれないのです。

実際に、ロケットストーブの煙突に溜まった煤(すす)を取り出して、ガスバーナーであぶって燃えるかどうか検証した時の様子がこちら。

ロケットストーブが煙突火災になりにくい理由を検証

この動画を見てもらうと分かるように、どれだけ煤をガスバーナーであぶっても、煤に火が移って燃え出す様子は見られません。

煙突の中に燃えるものがあれば煙突火災になる可能性は高まりますが、このように煙突の中に溜まった煤が燃えなければ煙突火災になることはありません。

ただし、湿った薪を多用したり、断熱していない燃焼室を使っていたりして燃焼室内の燃焼温度が下がった状態でロケットストーブを多用していると、未燃焼ガスが発生する場合があります。

「ロケットストーブだから煙突火災が発生しない」と言うよりは、「高温燃焼だから燃焼ガスも燃えてしまい、煙突内に可燃物が残らないため、煙突火災が発生しない」、または「ある一定期間ロケットストーブを運用した結果、煙突内部にタール状の可燃性の物質が溜まっていなかったので、煙突火災が発生する確立は極めて低い。」「定期的に煙突掃除を行っているので、可燃性物質が煙突内部に溜まっていないので、煙突火災は起こらない。」というような表現で覚えておくとよいでしょう。

最後に一言

薪ストーブのデメリットだった煙突火災を防ぐ5つのポイントについてお話しました。

鋳物の薪ストーブは、本体価格以上に煙突火災を防ぐための断熱煙突や複雑な本体のメンテナンスに費用がかかったりする傾向にあります。

だからこそ薪ストーブメーカーや販売店は儲かるわけなのですが、使いづらい鋳物の薪ストーブではなく、ロケットストーブを使えば、煙突火災に関するデメリットを解消する事が出来ます。

しかも、そのロケットストーブは安くて簡単に自作できてしまいます。

ぜひ皆さんも一度検討してみてはいかがでしょうか?

それでは!



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